
会社設立時の定款で、
「決算公告」
についての記載があるけど、注意点があれば事前に知りたい。
こんなテーマに関する記事です。
会社設立時の定款に記載する、「決算公告」についてわかりやすく説明しています。

株式会社の場合、会社法第440条で、
定時株主総会の承認後に遅滞なく貸借対照表又はその要旨を公開しなければならない
ということが義務付けられています。
このことを、
決算公告
といいます。
この決算公告は、
・官報
・電子公告(専門サービスの利用や自社HPへの掲載)
・日刊紙
で開示することになります。
(日刊紙での開示は、コスト的な面で、大手企業の場合以外は、現実的ではありません)
ただ、すべての会社が、「決算公告」をしているかというと、実際は、あまり、実施されていないという状況があります。
下記の東京商工リサーチの記事では、
2021年に官報に決算公告した株式会社は4万154社で、全株式会社のわずか1.5%
東京商工リサーチ https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220309_01.html
との記載があります。
官報以外の媒体で決算公告しているケースもありますが、いずれにしても、大手企業を除き、全体のわずかの会社しか、決算広告をしていないという実情があります。
[官報]決算公告の実施会社「わずか1.5%」
東京商工リサーチ https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220309_01.html
会社法で定める「決算公告」。決算公告が義務付けられている「株式会社」では、約8割の企業が決算公告を官報と記載している。だが、2021年に官報に決算公告した株式会社は4万154社で、全株式会社のわずか1.5%にとどまることがわかった。経営の透明性が重要視されているが、情報開示に消極的な中小企業が多いようだ。
「合併」や「資本金の額の減少」など、一部の法的公告は法令で官報公告と定めている。ただ、「決算公告」は「官報」だけでなく、「電子公告」や「日刊新聞紙」も可能だ。
東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースによると、株式会社の公告方法は「官報」が83.1%と大半を占め、日刊新聞紙ほかが14.5%、電子公告が2.4%だった。
会社法では決算公告の義務を怠った場合、100万円以下の過料という罰則規定が定められている。だが、同法が適用されたケースはほとんど確認されない。決算公告が進まない理由は、貸借対照表の公告料が最低でも7万4,331円(税込)、損益計算書を付記すると15万円近くかかる。こうした高額の公告料も決算公告が進まない一因とみられる。
下記に、「決算公告」の詳細についてみていきましょう。
「決算公告」の目的

「決算公告」の目的としては、
会社の株主や債権者などを含む利害関係者に、財務状態などを開示し、取引の安全性を保つこと
にあります。
ただ、財務情報を開示することで、利害関係者以外、例えば、競合先にも情報を開示することになり、結果、開示を躊躇するケースも想定されます。
また、官報を利用する場合に、そのコスト的な負担もあり、そのことが、実施している企業が少ないことの要因にもなっていると考えられます。
「決算公告」の費用

決算公告の費用としては、媒体によって異なりますが、概ね、下記になります。
・官報(年間費用として、約7万円~)
・電子公告
(専門サービスの場合、年間4,000円前後~、もしくは、自社HPへの掲載)
特に、官報の場合、毎年、約7万円~の費用が発生しますので、負担に感じる場合が多いと言えます。
電子公告制度について
下記の法務省のページに説明があります。
■電子公告制度について
■官報への記載について
下記ページ(PDF)に詳細な案内があります。
国立印刷局「法定公告について」
http://www.kanpou-ad.jp/download/s_guide.pdf
「決算公告」をしなかった場合の罰則

決算公告を怠った場合は、会社法976条で、
100万円以下の過料処分(罰金)
が定められています。
決算公告の例外

下記のケースは、決算公告を行う必要は無いとされています。
既に「EDINET 」で決算内容を開示している会社
上場公開している会社などは、「EDINET 」で、有価証券を開示していますので、改めて、決算公告をする必要はありません。
(会社法440条4項)
金融商品取引法24条1項に定める有価証券報告書の提出義務のある会社
有限会社
現在は、新規に有限会社は設立できませんが、以前のまま有限会社の形態の会社は、「決算公告の開示」の義務はありません。
会社法上の特例有限会社 (会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律28条)
その他の注意事項

「決算公告」の公告方法については、
基本、定款で定めて、登記をする必要
があります。
また、定款に記載がない場合は、官報による公告とみなされます。
但し、特例として、
決算公告のみを行う場合は、定款の変更の必要は無い
とされています。
但し、その場合でも、貸借対照表等が掲載されるサイトのURLを「登記」する必要があります。
※補足
決算公告以外は、下記のような事項に関して、公告が必要となります。
債権者保護手続きに関する事項
資本金の額の減少
株券提供公告
吸収合併、一部の吸収分割・株式交換・株式移転等の組織再編
解散 等
また、少し細かいお話しになりますが、
債権者保護手続きに関する公告
については注意が必要です。
「債権者保護手続きに関する公告」を、電子公告で行う場合、
「法律で定められた公告期間中、継続的に公告が掲載されていた」
ことを明らかにするの為、専門の機関に調査委託し、証明してもらう必要があります。
その為の費用が、10万円以上になるケースもあり、結果的に、官報より高額になってしまいます。
対策としては、
・決算公告は、電子公告
・債権者保護手続きに関する公告は、官報
とする為に、
定款には、官報による公告
として、
「貸借対照表に係わる情報の提供を受けるために必要な事項」として、公告を掲載するアドレスを登記する
という方法があります。
もっとも、債権者保護手続きに関する公告を開示する必要がなければ良いのですが、万が一の対応を事前に想定すると、上記にような内容が選択肢のひとつとしてあげることができます。
まとめ

「決算公告」に関しては、実態としては、
しっかりと行っている会社のほうが圧倒的に少ない
という状況になっています。
しかしながら、会社設立の際には、
どの公告方法を選択するか
で、コスト的なことにも関わってきます。
ですので、公告方法を選択する際には、その意味合いを把握した上で、選択されると良いと言えます。
以上、「決算公告」に関しての説明でした。
